実はそばにいたりする

題名的に夏場の怪談ぽいですが
そんなこと全くありませんのでご安心を。

『セトロジー』っていう言葉、ご存知ですか?
『鯨類学』を表す言葉で、クジラ・イルカを広く研究する学問分野なんだそうです。

国内には「セトロジー研究会」というのがありまして、
今年は秋田県が全国大会の会場ということで
白神山地の麓、「あきた白神体験センター」で行われた研究会に
 GAOスタッフ
初参加してきました!!

日本セトロジー研究会とは、鯨類や海棲哺乳類について
研究・普及・情報収集のためのネットワークをつくり
鯨類学の発展、情報発信のための研究会です。

鯨類というと、自分は理系のイメージというか
自然科学とか、そっち方面の分野かな~と思っていたのですが

鯨類の目撃情報を始め、進化の過程や分布、国内における目撃例や
鯨と人とのかかわり、日本とのかかわり、はたまた海外の捕鯨文化と
人との歴史等々・・・クジラ・イルカからさまざまな分野へと
どんどん世界が広がっていくようで、時間があっという間に過ぎてしまいました。

 はいこれ何でしょうと
言われましても自分にはちょっと変わった岩にしか・・・・・

 これ、
クジラ類の骨の化石なんですって!
男鹿の海の底、漁師さんの網に引っ掛かってきたものなんだそうですよ~。
海の底でなが~い間、こんなふうになるんですね。
見た目は木のようですが、触った感じはつるつるしていて、とてもきれいな石のようです。

 そもそも
今回、この研究会に参加させてもらったのは

 この
1頭のクジラの漂着からでした。大きさ2メートルほど。

今年の4月、GAOのそばの漁師さんがとっておいてくれたのです。
http://www.gao-aqua.jp/blog/?p=15805#comments

当時はスタッフが見ても「見たことない」。
外部の方に教えてもらったところ、オウギハクジラというクジラの仲間ということでした。
オウギハクジラは実はこれまでも漂着例とかで見たことがあったのですが
わからなかった理由は「新生児」だからでした。

そこから、秋田県内をはじめ
全国の漂着例を調査研究している方とつながり、今回の研究会に参加させてもらいました。

クジライルカというと、形は浮かぶと思いますが・・・
オウギハクジラっていうクジラ、みなさん知ってますか??

このオウギハクジラというクジラはですね・・・

っていうくらい、一般的にはあまり知られていませんが
国内ではごくたまに海岸に死んだ状態ではありますが漂着例があり
しかし自然下での観察例や生きた姿というのはほとんど知られていません。

写真なんかはもちろん無いので
 オリジナル図解!
大きさは大人で5メートルほど、ちなみに描いたのはオスです。
白いのはオスのみの体表に現れる、線状の傷(のつもり)です。闘争の傷といわれていますが
実際の画像等で見るともっとたくさんついています。(図鑑等で探してみてくださいね)

それに特徴的なのは

 この
下あごから出ている歯ですね。
この歯の形から「オウギハクジラ」と名付けられたそうです。
こうしてみるとちょっとかわいいキバみたいですが、歯のみの形では
扇の形をしているそうですよ。ちなみにこの歯はメスにはありません。。

秋田県を始め日本海側ではたま~~に漂着することが知られていながら
決して小さい生き物ではないのに
その生態や習性はほとんど謎というとても不思議な生き物です。 
野生下の、生きている映像画像はほとんど無いようです。(自分はあんまり
見たことがない)

過去、GAOにも
県内の海岸にオウギハクジラが漂着しているという情報はいくつかいただいており
日本海側での漂着例の中に入っていたのですが

自分は知りませんでした。

秋田県は、日本ではじめて
「オウギハクジラ」と同定された種のクジラが
漂着した県なんです。

そもそもこのオウギハクジラですが、その存在が知られてからの歴史は
そう古くありません。

なんだかわからないけどたぶんクジラの仲間だけど
下あごから大きな歯が突き出ている頭の骨があったことから
このような生き物がどうやら海にはいるらしいと
判明したのが1800年後半。

しかしその後、その生き物らしき目撃例もなく
1900年台の後半になってから「漂着」が研究され始め
国内においての調査研究が始まったのが1980~1990年ころなんだそうです。

そして秋田県においてクジラ類らしき大型の生き物が漂着し
調査したところ、オウギハクジラというクジラの仲間だったと・・・。。

会場となったセンターのそばの、八峰町文化交流センターには
 オウギハクジラの
全身骨格があります。

こういう生き物が、人の目にあまり触れることなく
今も海を泳いでいるんですね。

4月に、漁師さんが教えてくれたオウギハクジラの新生児は
今、東京で貴重な研究資料として保管されています。

過去にも、東北日本海側で
オウギハクジラの新生児や、さらにお腹の中に胎児がいる状態の漂着例が
あったことから、日本海側はもしかしたら出産の場になっているのではと
考えられています。

水族館周辺の漁師さんからも、
「ちょっと出ればイルカの群れがいる」という話は
よく聞く話で
水族館の入口から見えるところにも来たときがありますし
人間が知らないだけで、きっと近くの海に生きているんですね。

自分たちの目に今は見えないだけで
実はそう離れていないところに魅力的な生き物がいるんだなと思うと
できれば見てみたいけれど無理に近づいてびっくりさせたくないし
離れていないところで、生きていてほしいなあと思います。

そしていつかちょ~~っとでも、その姿を見せてくれたら・・・。。

知られていないけど、知るとこんなにも不思議で面白いことがそばにあるんですね!
男鹿水族館も「日本のセトロジー学」の情報発信地の一つとしての役割を担えるような
水族館にならなくてはいけませんね!

思えば、漁師さんの
「GAOの人にも勉強になると思って」の気持ちがなければ
今こうはなっていませんでした。

今回の研究会で、「情報はあっても、そこに人がいるかどうか。
そこにどんな人がいるか。その人、その動き次第で、その出来事、情報が今後どうなるかが決まる」
という言葉が印象的でした。

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